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再生・経営改善

病院の医業外収益を増やす — 補助金・駐車場・テナント・余剰スペース活用で経営を底上げする

監修者 藤井翔悟

2026-09-21 | NPO法人日本はすばらしい 病院経営支援チーム
監修: 藤井翔悟(医療機関経営支援16年・累計1,000院以上)

病院の経営環境は、ここ数年でかつてないほど厳しさを増しています。四病院団体協議会(四病協)の2024年度病院経営定期調査最終報告によると、医業赤字は74.6%、経常赤字は65.6% にのぼります。両者の差約9ポイントは、医業外収益や補助金が下支えしている病院が相当数存在することを示しています。

裏を返せば、医業外収益を積み上げることで経常黒字を維持できている病院があるということです。医業収益の改善だけを追いかけていた経営から、医業外収益の最大化という視点を加えるだけで、収支構造は大きく変わりえます。

本記事では、病院が実践できる医業外収益の強化策を「補助金・交付金の確保」「駐車場収益の最大化」「売店・テナント誘致」「余剰スペースの賃貸活用」「月次管理の仕組みづくり」の5つの切り口から、実務に即して解説します。


1. 医業外収益とは何か — その種類と経営上の位置づけ

医業外収益とは、病院の本来業務である医療サービス(医業)以外の活動から生まれる収益です。損益計算書では「医業外損益」に分類され、主に次のような項目が含まれます。

医業外収益の主な種類と概要

代表的な医業外収益の種類

区分 具体例 主な管理部署
補助金・交付金 国・都道府県・市区町村からの施設整備補助、感染症対策補助、物価高騰対応補助など 事務部・経営企画
駐車場・自転車場収入 外来患者向け時間制駐車料金、職員定期利用料、自転車置場使用料 施設管理・事務部
売店・テナント賃料 院内コンビニ・売店・カフェの場所代、自動販売機ロケーション料 施設管理・総務
建物・土地の賃貸収入 余剰病棟・会議室を訪問看護ステーション等に転貸 施設管理・総務
受取利息等 銀行預金利息、短期運用益 経理

医業赤字74.6%という数字が示すように、医業収益だけで費用を賄えない病院が大多数を占める現状において、医業外収益は「あれば助かる程度のもの」ではなく、経常収支を左右する重要な経営資源です。

特に中小規模の民間病院では、物価高騰や賃上げ圧力によって費用が増大しており、帝国データバンクの2024年度調査でも民間病院約900法人の営業赤字が61.0%(前年度54.8%から悪化)という厳しい実態が確認されています。こうした環境だからこそ、医業外収益の積み上げが不可欠となっています。


2. 補助金・交付金の確保 — 申請しなければゼロ円

医業外収益のなかで、最初に整備すべきなのが補助金・交付金の申請体制です。

補助金は「申請しなければ1円も入ってこない」収益源です。要件を満たしていても情報を把握していなければ逃すだけで、すでに申請している競合病院との間に収益差が生まれます。

補助金・交付金の申請フロー(病院向け)

病院が狙うべき主な補助金カテゴリ

(1)施設整備補助 老朽化した建物・医療機器の更新に際して都道府県や市区町村が補助金を拠出するケースがあります。特に公立病院の場合は総務省の公立病院経営強化プランに基づく支援が設けられています。民間病院でも、へき地医療や救急医療を担う場合には地域枠としての補助対象になることがあります。

(2)感染症対策・物価高騰対応補助 令和6年度以降も、感染症対策の設備整備や物価高騰に対応するための補助金が国・自治体から断続的に措置されています。特に「物価高騰対応」は令和8年度診療報酬改定で物価対応料が新設されたこととあわせて、費用増分の補填手段として活用できます。

(3)賃上げ・ベースアップ補助 令和8年度改定では入院ベースアップ評価料が最大250点へ拡充されましたが、診療報酬の算定とは別に、自治体が単独で賃上げ支援補助金を設けているケースもあります。

(4)福祉医療機構(WAM)の融資・補助 WAMは病院への無利子・低利融資のほか、経営改善支援として補助メニューも存在します。福祉医療機構の病院経営動向調査(WAM短観)を活用しながら経営実態を整理し、支援メニューへの応募を検討することが有効です。

体制づくりの実務ポイント

補助金情報は、e-Gov(政府補助金情報)、都道府県の福祉保健局、市区町村の担当窓口から入手します。年度初めに公募スケジュールを確認し、事業計画書の雛形を事前に整備しておくことで、公募開示から締切までの短い期間でも対応しやすくなります。

**重要な注意事項として、交付決定前の事業着手は補助対象外となる場合があります。**事業開始のタイミングは必ず担当窓口に確認してください。


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3. 駐車場収益の最大化 — 「ただの利便施設」から「収益源」へ

多くの病院では、駐車場を「患者・職員のための利便施設」としてのみ捉え、収益化の観点が薄い傾向があります。しかし、立地条件・規模・運営方式の組み合わせ次第で、駐車場は安定した医業外収益源になります。

駐車場収益化モデルの比較

運営方式の選択

時間制・外来中心型 来院患者が多い病院では、時間制駐車料金を導入することで稼働率に応じた収益が期待できます。精算機・ゲートの初期投資は必要ですが、外来患者数が多い病院では収益ポテンシャルが高くなります。初診・検査目的など滞在時間が比較的短い患者の多い病院に向いています。

定期利用・職員中心型 職員向け定期利用料を徴収する形式は、月ごとに安定した収入が見込めます。職員駐車スペースを有料化することで、毎月一定の医業外収益が計上されます。ただし、職員のモチベーションや採用競争力への影響を考慮した設定が必要です。

外部委託型 管理会社に運営を委託する形式では、病院側の管理コストを最小化しながら一定の保証収入を得られます。委託料の控除後の手取りは直営より少なくなりますが、スタッフリソースが不足している中小病院では現実的な選択肢です。

外来・職員スペースの分離

外来患者用と職員用の駐車エリアを分離することは、患者サービスの質を保ちながら収益化するうえで重要です。患者が停められない・停めにくい状況は外来離れの一因になりえます。スペースの配分とゲート設定を見直すだけで、実質的な収益改善が図れる場合があります。


4. 売店・テナント誘致 — 患者満足度と収益を同時に高める

院内の売店・カフェ・自動販売機スペースは、病院の「顔」でもあります。これらを収益化する方法として「直営」「委託」「テナント誘致」の3形態があります。

売店・テナント形態別 損益特性の比較

コンビニエンスストアとの契約

近年、院内に大手コンビニエンスストアを誘致する病院が増えています。病院側は場所代(テナント料)を受け取るだけで、在庫管理・品質管理・人員確保の負担をテナント事業者に委ねられます。患者・家族・職員のQOLも向上し、「病院選びの一要素」として機能するケースもあります。テナント誘致に際しては、床面積・電気容量・搬入経路などの物理的要件と、契約期間・賃料設定を慎重に検討することが重要です。

自動販売機のロケーション料

自動販売機の設置は、最も簡単に医業外収益を確保できる手段の一つです。飲料・食品・医療用品など多様な機種があります。ロケーション料の水準は施設規模や立地条件によって大きく異なりますが、設置台数・機種・配置場所を見直すだけで収益改善できるケースもあります。既設の自動販売機の契約条件を定期的に見直すことを推奨します。

院内カフェの設置

一定規模以上の病院では、院内カフェの委託運営を検討する価値があります。患者家族の待ち時間の質を向上させるとともに、賃料収入が医業外収益に寄与します。ただし、スペース確保・火気使用許可・感染管理との兼ね合いが必要です。


5. 余剰スペースの賃貸活用 — 使っていない空間を収益に変える

病床削減や診療科再編の結果、使われなくなった病棟フロア・会議室・地下スペースが発生している病院は少なくありません。こうした余剰スペースは、費用(減価償却・光熱費)だけが発生する「コストセンター」になりがちですが、賃貸に出すことで医業外収益に転換できます

余剰スペース活用マトリクス

在宅・福祉事業者へのサブリース

訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、障害福祉サービス事業所などの在宅・福祉系事業者は、病院との近接・連携を望むケースが多くあります。余剰病棟の一部フロアをこうした事業者に賃貸することで、地域連携の強化と医業外収益の確保を同時に実現できます

契約に際しては、医療法・建築基準法・消防法上の用途変更要件や、エレベーター・トイレ共用の可否を事前に確認することが必要です。

会議室・研修室の外部貸し出し

医師・コメディカルの研修や学術集会など、院内で利用する時間帯以外は、外部団体に会議室・研修室を有償で貸し出すことができます。規模が大きくなくても、継続的な収入源になります。予約管理システムの導入で運営負担を最小化することが可能です。

屋上・駐輪場スペースの活用

屋上への太陽光発電設備の設置による売電収入は、エネルギーコスト削減と医業外収益確保の両面で有効です。ただし初期投資が必要なため、リース形式や第三者所有モデルの導入可否を事前に確認することを推奨します。また、駐輪場の有料化も小さいながら安定した収益源になります。


6. 医業外収益の月次管理と経営指標への組み込み

医業外収益は「入ったとき」に初めて収益として認識されがちですが、月次モニタリングに組み込むことで計画的な経営につなげられます。

医業外収益強化 年間PDCAサイクル

月次でモニタリングすべき指標

指標 確認の目的
補助金収入累計 年度内申請分の入金状況と残予定額の把握
駐車場稼働率 収益機会の損失がないか確認
テナント・売店賃料 未収がないか確認。契約更改タイミングの把握
医業外収益合計(対前年比) 年間目標に対する進捗と増減要因の特定

月次決算の際に医業収益と合わせて経常収益を確認する習慣をつけることで、医業収益が一時的に落ち込んでも、医業外収益でカバーできる経営体質に近づけることができます。

経常赤字と医業赤字の差から現状を把握する

四病協調査では、医業赤字74.6%に対して経常赤字は65.6%でした。この約9ポイントの差は、補助金や医業外収益によって経常黒字を保っている病院が一定数あることを意味します。自院の損益計算書で同様の差がどの程度あるかを確認し、医業外収益を意識的に強化することで経常黒字に近づけられるか試算することが第一歩です。


まとめ

医業外収益の強化は、診療報酬改定のたびに一喜一憂する経営から脱する手段の一つです。補助金申請の体制づくり・駐車場の収益化・売店テナントの誘致・余剰スペースの賃貸活用という4つの柱を順に整備し、月次でモニタリングする仕組みを整えることが重要です。

医業赤字74.6%という現実は変えられなくても、医業外収益の積み上げによって経常収支を黒字に転換することは、多くの病院にとって実現可能な目標です。まずは自院のスペースと財務数値を見直し、取り組める項目から着手することをお勧めします。

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