赤字病院の再建には定石の順序があります。順序を間違えると——たとえば資金繰りが持たないのに中期構想を描いていると——計画そのものが絵に描いた餅になります。本記事では、再建を「90日・6ヶ月・24ヶ月」の3フェーズで整理します。
フェーズ1:最初の90日 — 止血と現状把握
資金繰りの確保が最優先
- 資金繰り表を週次で作成(月次では危機時の解像度が足りません)
- 金融機関への早期相談。福祉医療機構(WAM)の経営資金も選択肢
- 支払サイトの調整、リース・保守契約の棚卸し
「どこで赤字が出ているか」を分解する
病院の赤字は必ず分解できます。最低限、次の軸で見える化します。
- 病棟別:病床利用率×単価×稼働日数。空床が最大の赤字源であることが多い
- 診療科別:医師人件費に対する診療収益
- 収益/費用:収益不足型か、費用過剰型か(打ち手が真逆になります)
診療報酬の算定漏れチェック
施設基準の届出漏れ、加算の算定漏れは、追加投資ゼロで収益が増える数少ない打ち手です。入院基本料の加算、地域連携系の加算、栄養・リハ関連は漏れの頻出地帯です。
フェーズ2:〜6ヶ月 — 収益構造の改善
病床利用率を上げる実務
- 地域の急性期病院・ケアマネ・施設への後方連携営業(紹介元の開拓)
- 入退院支援の体制整備(退院日の谷を減らし、回転を上げる)
- 病床機能の見直し:急性期で埋まらないなら、地域包括ケア病棟や回復期への転換を検討
費用の適正化
- 医薬品・診療材料の価格ベンチマークと共同購買
- 委託費(給食・清掃・検査)の相見積もり
- 人件費は最後。安易な人員削減は診療機能と職員士気を壊し、再建を不可能にします
フェーズ3:〜24ヶ月 — 構造転換と自走化
- 地域医療構想・診療報酬改定の方向と整合する病床機能の再設計
- 医師・看護師の採用力の再建(紹介会社依存からの脱却)
- 月次経営会議の定着:数字が現場に共有され、現場から改善が出る状態が「自走」です
経営改善計画づくりの注意
金融機関に提出する経営改善計画は、希望的観測の積み上げでは通りません。「病床利用率が1ポイント上がると収益がいくら増えるか」を根拠に、打ち手と数字を1対1で紐付けることが信頼性の核になります。
まとめ
再建は「資金繰り→止血→収益構造→構造転換」の順です。そして最初の現状分解を経営陣だけで行うのは、実は困難です(院内の常識が数字の異常を見えなくするからです)。当NPOの無料経営診断を、外部の目を入れる最初の一歩としてご活用ください。