病院のコスト構造の中心は人件費です。人件費率(人件費÷医業収益)は経営状態を最も端的に映す指標ですが、「高い=悪」と短絡すると打ち手を間違えます。水準の読み方から整理します。
計算のルールを揃える
人件費率(%)= 人件費 ÷ 医業収益 × 100
注意点は2つあります。
- 委託費に隠れた人件費:給食・清掃・医事課業務を外部委託していると、人件費率は見かけ上低くなります。委託費を含めた「人件費+委託費率」でも見るべきです
- 退職給付・法定福利費を含める:給与だけで計算すると実態より数ポイント低く出ます
水準感:50%・55%・60%の壁
病床機能や委託の範囲によって適正水準は異なりますが、実務では概ね次のように読まれます。
| 人件費率 | 読み方 |
|---|---|
| 〜50% | 効率的。ただし職員の処遇が低すぎないか逆点検を |
| 50〜55% | 多くの急性期・ケアミックス病院の標準的レンジ |
| 55〜60% | 黄信号。収益側(稼働・単価)の問題があることが多い |
| 60%超 | 赤信号。構造的な赤字体質になっている可能性が高い |
療養型・精神科など人員配置が薄い機能では全体に低め、リハビリ提供量の多い回復期では高めに出るなど、機能別の癖があります。同機能・同規模との比較が原則です。
人件費率が高いとき、犯人は「分子」より「分母」
人件費率60%超の病院を分析すると、人件費(分子)が過大なのではなく、医業収益(分母)が過小であるケースが大半です。つまり、
- 病床利用率が低い(空床に固定人件費がかかり続けている)
- 診療単価が低い(施設基準・加算の取りこぼし)
- 病床機能が需要とずれている
このとき人員削減から着手すると、診療体制が崩れて収益がさらに落ち、人件費率がむしろ悪化するという再建失敗の典型パターンに陥ります。
正しい改善順序
- 分母を増やす:稼働改善・算定適正化・機能転換(前述)
- 構成を変える:紹介会社依存の採用を見直し、採用単価を下げる。時間外の偏りを均す
- 最後に規模を適正化する:病床数自体を需要に合わせて縮め、配置基準ごと軽くする(単なる人減らしではなく、器の再設計)
まとめ
人件費率は「単体で見ない・機能別で比べる・分母から直す」が鉄則です。自院の人件費率がなぜその水準なのかを、稼働・単価・機能とセットで診断することが再建の入口になります。無料経営診断では、この分解を含めた現状評価をお返ししています。