日本病院会などによる近年の病院経営調査では、赤字病院の割合は6〜7割に達すると報告されています。これは個々の病院の経営努力の問題だけでは説明できない水準です。まず構造要因を正確に理解することが、打ち手を考える出発点になります。

構造要因1:収入は公定価格、費用は市場価格

病院の収入単価は診療報酬という公定価格で固定されています。一方、費用側の人件費・光熱費・医薬品・材料費・建築費は市場価格で上昇し続けています。近年の物価・賃金上昇局面では、このハサミの開きが一気に拡大しました。一般企業のような「値上げ」ができない以上、収入を増やす手段は稼働と算定の最適化に限られます。

構造要因2:患者数の減少と病床の過剰

人口減少と入院期間の短縮により、多くの地域で入院需要そのものが減っています。病院はコストの大半が固定費(人件費・設備)であるため、病床利用率の低下がそのまま赤字に直結します。損益分岐点となる利用率は一般に80%前後と言われますが、全国平均はそれを下回る水準で推移しています。

構造要因3:人件費構造の硬直性

病院のコストの5〜6割は人件費です。しかも配置基準(看護配置など)があるため、患者が減っても人員を比例して減らすことはできません。医師・看護師の採用競争は紹介手数料の高騰を招き、費用をさらに押し上げています。

構造要因4:経営人材の不足

病院の経営トップは臨床出身の医師が大半で、財務・マーケティング・労務の専門教育を受ける機会がないままトップに就きます。事務長も総務出身が多く、「経営のプロ」が組織のどこにもいない病院は珍しくありません。構造逆風の時代に、これは決定的なハンデになります。

それでも黒字の病院がある — 共通点は4つ

同じ診療報酬、同じ人件費相場でも黒字を維持する病院には共通点があります。

  1. 病床機能が地域の需要と一致している — 急性期にこだわらず、回復期・地域包括ケアへ転換した
  2. 紹介元との連携が営業として仕組み化されている — 待つのではなく、取りに行く
  3. 数字が月次で現場に共有されている — 病棟師長が自病棟の利用率と収益を知っている
  4. 算定・購買に外部の知見を入れている — 院内の常識に閉じない

つまり、赤字の6〜7割は「環境のせい」で説明できますが、その環境下で何をするかには依然として大きな差があるということです。

まとめ

構造要因は個々の病院では変えられません。しかし、病床機能・連携・算定・数字の共有という4つの内部要因は変えられます。貴院の赤字が「構造由来」なのか「内部要因由来」なのかを切り分けることが、再建の第一歩です。無料経営診断で、その切り分けをお手伝いします。