人件費は、病院の費用の過半を占めます。だからこそ、経営が苦しくなると真っ先に議題に上がり、そして最も多くの再建を失敗させてきた領域でもあります。

失敗の型は決まっています。給与カットから始めて、人が抜け、施設基準が維持できなくなり、収益が落ち、さらに苦しくなる。

看護配置が崩れれば入院基本料の届出を維持できません。医師が抜ければ診療科が閉じます。人件費を削って収益基盤を壊すのは、資産を切り売りするのと同じです。

人件費適正化の本質は「減らすこと」ではなく、「同じ人数で、より多くの収益を生む配置に変えること」です。

適正かどうかを判断する前に

人件費率(人件費 ÷ 医業収益)は、病床機能・規模・地域によって大きく異なります。「◯%が適正」という単一の基準はありません。 比較すべきは次の3つです。

  1. 自院の過去5年の推移(どこから、なぜ上がったのか)
  2. 同じ病床機能・同規模の病院の分布(公表されている統計の分布と比べる)
  3. 職種別の内訳(総額ではなく、どの職種で増えたのか)

そのうえで、上がった原因を分解します。

人件費の増加
├ 単価の上昇(賃上げ、処遇改善、社会保険料率)
├ 人数の増加(増員、欠員補充)
├ 時間外労働の増加
├ 派遣・紹介費用の増加   ← 見落とされやすい
└ 収益の減少による「率」の悪化   ← これは人件費の問題ではない

最後の行が重要です。 人件費率が悪化した原因が収益の減少なら、直すべきは収益側です。人件費に手を付けるのは筋違いになります。