3行結論
- 令和8年5月13日の中医協において、「追加的有用性がなく費用増となる医薬品・医療機器の価格調整範囲を拡大する」方針が示され、令和8年10月から中医協で本格的な議論が始まる見通しです
- 令和8年9月を目途に専門家による研究班が科学的分析を完了し、令和8年12月(目途)までに結論を出すスケジュールで、令和9年度薬価中間年改定への反映が想定されます
- 高額医薬品・医療機器を採用している病院では薬剤費の変動リスクが高まる可能性があり、採用品目の動向確認と薬剤部門との情報共有体制の整備が課題候補になります
費用対効果評価制度とは
薬価の費用対効果評価制度は、医薬品・医療機器の「効果の大きさ」と「費用(薬価)」のバランスを評価し、費用対効果が低い品目について薬価を調整する仕組みです。新規収載された高額医薬品・医療機器のうち対象品目については、中医協の専門部会で費用対効果分析(ICER:増分費用効果比などを活用)が実施され、その結果に応じて薬価の引き下げが行われます。
今回の議論の対象となるのは、特に「比較対照技術と比べて追加的有用性が認められず、かつ費用が増加する」品目に対する価格調整の範囲の拡大です。現行の制度よりも価格引き下げの対象範囲・引き下げ幅を広げる方向での見直しが検討されており、これにより医療保険財政への影響が軽減される可能性がある一方で、医薬品開発のイノベーション評価とのバランスが論点となっています。
議論のスケジュール
GemMedの報道(gemmed.ghc-j.com)によると、本改革の検討スケジュールは以下の通りです。
- 令和8年5月13日: 中医協において方針を提示
- 令和8年9月(目途): 専門家の研究班が分析を完了(追加的有用性の評価の科学的根拠・ICERの不確実性・比較対照技術の臨床的妥当性を検討)
- 令和8年10月〜: 中医協で本格議論開始
- 令和8年12月(目途): 結論・答申
- 令和9年度薬価中間年改定: 見直し内容の反映が想定
現在(令和8年9月)はちょうど研究班の分析が完了し、中医協の本格議論へ移行する直前の局面にあたります。今後2〜3か月で具体的な対象品目・引き下げ幅の方向性が明らかになってくる見込みです。
病院経営の視点からみた注目ポイント
高額薬剤の薬価変動リスク
費用対効果評価の結果として「追加的有用性なし・費用増」に分類された品目について薬価引き下げが行われた場合、当該品目の購入コストは変動する可能性があります。ただし、具体的にどの品目がどの程度影響を受けるかは、令和8年10〜12月の中医協議論の内容によります。採用品目ごとの評価状況については、薬剤部門を通じて継続的に情報収集することが推奨されます。
イノベーション評価とのバランス課題
中医協の委員からは「医療保険制度の維持とイノベーション評価のバランス」の必要性が指摘されています。費用対効果が低いと評価された品目に対して厳しい価格引き下げを行うことは医療保険財政への寄与が見込まれる一方、「優れた医療技術開発を阻害しかねない」という懸念も示されており、議論の着地点は現時点では確定していません。
薬剤費管理体制の整備
費用対効果評価の対象品目は個別に審査されます。薬剤部門が評価動向を把握し、採用品目の継続可否や後発医薬品・バイオシミラーへの切り替え可能性を定期的に検討する体制が、今後一層重要になる候補として挙げられます。ただし、採用品目の変更に際しては診療上の適切性も考慮が必要であり、臨床部門との連携が前提となります。
自院で確認したいこと
- 費用対効果評価の審査対象となっている医薬品・医療機器の採用品目を薬剤部門と共有し、令和8年10〜12月の中医協議論の動向を定期的に確認できる体制になっているか
- 「追加的有用性なし・費用増」に分類される可能性がある採用品目について、令和9年度薬価中間年改定後の薬剤費変動をシミュレーションしているか
- 後発医薬品・バイオシミラーへの切り替えについて、薬事委員会での定期的な議論が行われているか
- 費用対効果評価の結果が特定の診療報酬加算の算定要件と関係する場合があるため、最終確認は地方厚生局および製薬企業への問い合わせを行ってください
- 制度改革の詳細(対象品目・引き下げ幅・適用時期等)については、令和8年10〜12月の中医協総会・専門部会の議論を継続的に確認することが必要です