3行結論
- 厚生労働省は令和8年9月、**「令和8年度医療機関等の経営状況に係る臨時調査」**を開始した。病院・一般診療所・歯科診療所・保険薬局の約1万2千施設が対象(無作為抽出)
- 令和8年6〜9月分の収支データを令和7年同期と比較し、令和9年度予算編成過程における診療報酬のさらなる調整のための基礎資料とする
- 調査票の提出期限は令和8年11月10日(火)。選定された施設は回答への協力が求められている
調査の背景 — なぜ改定後に臨時調査が行われるのか
令和8年度診療報酬改定の大臣折衝では、改定率の根拠として「賃上げ・物価高騰への対応」が前面に出されました。同折衝の記述には「経済・物価動向次第で令和9年度予算編成過程において、加減算を含むさらなる調整を行う」という条件が付けられています。
この「さらなる調整」を行うには、改定後の医療機関の経営実態を定量的に示すデータが必要です。今回の臨時調査はその具体的な情報収集の手段として実施されます。本来、経営状況の大規模調査は「医療経済実態調査(医療機関等調査)」が2年に1回行われますが、今回は診療報酬改定の直後という特殊な時期に臨時的に追加実施されるものです。
調査の主な概要
厚生労働省が公表した内容から確認できる主な概要は以下のとおりです。
- 対象施設種別:病院・一般診療所・歯科診療所・保険薬局
- 抽出規模:約1万2千施設(無作為抽出)
- 調査比較期間:令和8年6〜9月分 vs 令和7年6〜9月分
- 調査票提出期限:令和8年11月10日(火)
- 調査委託先:株式会社健康保険医療情報総合研究所(問合せ先:info@jiccho2026.jp)
選定された施設には調査票が順次通知・送付されており、「原則として全ての調査項目について」の回答が求められています。
令和9年度以降の診療報酬調整への影響
本調査の結果は、令和9年度(2027年度)の診療報酬調整の判断材料となる可能性があります。m3.comの報道によれば、中医協でも本調査の実施が確認されており、「令和8年度改定後の経営への影響」を総合的に評価するためのデータとして活用される見通しです。
調査の設計は令和8年と令和7年の同時期データの比較によって、診療報酬改定の影響を切り出す構造になっています。改定による単価変化が収益にどう作用したかを可視化しやすい設計です。
「改定後の経営が悪化している」というデータが示されれば、さらなるプラス方向の調整が検討される余地があります。一方で「経営が安定している」という結果であれば、現水準が維持される根拠となります。いずれの方向に作用するかは結果次第ですが、診療報酬水準に直接関係するデータであることに変わりはありません。
2年に1度の医療経済実態調査が次回実施されるまでの間、この臨時調査が「改定の影響を示す公式データ」として中医協の議論の基礎に据えられることになります。
自院で確認したいこと
- 調査票が届いた施設は、令和8年11月10日(火)の提出期限を見据えて、院内の対応担当者と回答に必要なデータの所在を早期に確認する
- 回答には令和8年6〜9月分の経営・収支データが必要になる見込みのため、月次の損益資料を随時整備しておく
- 無作為抽出のため今回選定されなかった施設でも、自院の経営データを定期的に記録・把握する習慣を継続することが、将来的な対応に有用
- 令和9年度以降の診療報酬調整の動向については、今後の中医協・厚生労働省の発表を継続的に確認する。具体的な調整内容・方向性の最終情報は地方厚生局や関係団体の発表に基づいてご確認ください