3行結論
- 日本医師会が令和8年5月5日に公表した調査では、745病院・診療所(回答率44.6%)の**88.3%が「救急医療体制の縮小・撤退は行っていない」**と回答
- 一方で、**手術件数が減少した医療機関は24.9%**にのぼり、急性期病院の収益に影響を与えている可能性があります
- 働き方改革はワークライフバランスの改善に寄与する面がある一方、医師偏在・看護職員確保不足という構造的課題も浮き彫りになっています
調査の概要
日本医師会は令和8年5月5日、「医師の働き方改革と救急医療等の現場に関する調査」の結果を公表しました。調査は令和7年12月から令和8年1月にかけて実施され、救急医療機関・周産期母子医療センター・小児救急拠点病院などを対象としています。
- 調査対象: 745病院・診療所
- 回答率: 44.6%
令和6年4月に医師の時間外労働規制が施行されてから約2年が経過した時点での調査であり、制度の現場への影響を示す公的な調査として注目されます。
急性期・救急医療体制への影響
救急医療・周産期医療・小児医療の各体制について、縮小・撤退の有無を尋ねた結果は以下のとおりです。
- 救急医療体制の縮小・撤退なし:88.3%
- 周産期医療体制の縮小・撤退なし:90.0%
- 小児医療体制の縮小・撤退なし:86.7%
約9割の医療機関が体制を維持しているという結果は、医師の時間外規制が即座に救急縮小に直結するわけではないことを示しています。一方、残りの約1割の施設では何らかの体制変更が生じていることも確認されており、地域によっては医療アクセスへの影響が懸念される局面もあります。
外来・入院・手術への影響
外来・入院・手術について、縮小や減少が生じた施設の割合は次のとおりです。
- 外来診療体制を縮小した機関:8.9%
- 入院診療体制を縮小した機関:8.2%
- 手術件数が減少した機関:24.9%
手術件数の減少は4施設に1施設の割合に相当します。手術は急性期病院の診療報酬収益の柱となりえる領域であるため、件数減少は病院経営上も注視すべき指標です。外来・入院の縮小は1割未満にとどまっているのに対し、手術件数の減少が相対的に大きい点は、働き方改革の影響が担当医師の勤務負担と密接に関係する手術部門で顕在化している可能性を示唆します。
現場で指摘された課題と好影響
調査では課題と好影響の両面が報告されています。
主な課題:
- 医師偏在(特に地方・夜間対応ができる医師の不足)
- 看護職員の確保不足
- 患者数の増加への対応
主な好影響:
- ワークライフバランスの改善
- 勤怠管理・勤務実態の可視化が進んだ施設での意識変容
施行から約2年が経過し、勤怠管理体制の整備は一定程度進みつつあるものの、長時間労働に依存してきた医療提供体制の構造的課題は残っています。単純な労働時間の削減だけでは対応しきれない面があるという実態が、本調査を通じて改めて浮き彫りになっています。
自院で確認したいこと
- 自院の手術件数・外来・入院体制の現状を前年同期と比較し、体制変化が働き方改革の影響かどうかを定量的に把握する
- 医師の時間外労働時間がB水準・連携B水準・C水準のいずれに該当するか、および今後の更新届出が必要な時期を確認する
- 看護職員・コメディカルの確保状況と、医師業務との連携・タスクシフトの進捗を定期的に評価する
- 医師偏在への対応として、地域の医師確保計画や地域医療支援センターの情報を収集する
本調査の詳細は、日本医師会の公式サイトよりご確認ください。自院の対応方針は、地域の実情や医療機関の機能に合わせてご検討いただくことをお勧めします。