3行結論

  • 四病院団体協議会(四病協)は2026年8月21日、上野賢一郎厚生労働大臣あてに令和9年度税制改正の重点要望を提出した
  • 筆頭要望は「控除対象外消費税問題の抜本的解決」。四病協の2025年度病院経営定期調査によれば医業利益ベースで赤字病院の割合が**74.6%**に達しており、消費税の「損税」が経営悪化を直接押し上げていると訴えている
  • 事業税の非課税・軽減措置の継続要望も盛り込まれており、物価高騰や医療DX投資が続くなか、診療報酬以外の税制面からも病院経営を支える仕組みの整備が問われている

控除対象外消費税問題とは何か

社会保険診療報酬は消費税が非課税とされているため、医療機関は患者から消費税を受け取ることができない。一方で、建物・設備・医療機器の整備や運営経費にかかる消費税(仕入れ消費税)は自己負担となる。この「収益が非課税なのに費用に消費税がかかる」構造から生じる損失は「控除対象外消費税」または「損税」と呼ばれ、長年にわたり医療界の宿題となってきた課題だ。

現行制度では診療報酬の加算(医療機関係数への補填)によって一定の対応がとられているが、補填の偏りが大きい。四病協の調査によれば、大規模急性期病院では補填率が60%台にとどまり、1病院あたり8,000万円から1億7,000万円規模の損税が発生している病院も存在するとされている。一方、療養病棟の多い病院は補填率が高く、施設機能によって補填の過不足が生じていることが課題として指摘されてきた。

建築費や医療機器費が近年急騰していることから、消費税の実質負担は増加の一途をたどっており、老朽化施設の建て替えや医療DX投資への影響が深刻化している。

要望の背景 — 赤字74.6%という現実

四病協が今回の税制改正要望の根拠として示しているのが、2025年度病院経営定期調査の結果だ。この調査では医業利益ベースで赤字病院の割合が**74.6%**に達していることが報告されている。

令和8年度診療報酬改定では本体改定率が引き上げられたものの、建築費・物価の高騰や医療DX投資、サイバーセキュリティ対策への支出増が重なり、経営の抜本改善には至っていないというのが病院団体の認識だ。四病協は「地域医療を維持するためには診療報酬による対応に加え、税制を含めた支援策の充実が不可欠」と強調している。

要望の主な2本柱

① 控除対象外消費税問題の抜本的解決

社会保険診療報酬および介護報酬にかかる非課税制度を見直し、病院において仕入税額控除が適切に行われる課税制度(標準税率・軽減税率・ゼロ税率等)を実現することを求めている。診療報酬での加算補填方式は施設種別によって補填の過不足が生じる構造的な問題があるとして、税制上の仕組みとして根本的に解決することを最優先課題と位置づけている。

② 事業税の非課税措置・軽減措置の継続

医療機関に対する事業税の非課税措置および軽減措置の存続を要望している。これらの措置が縮小・廃止されれば新たな負担増となることから、現行水準の維持を求めている。

今後の見通し

税制改正要望は例年夏から秋にかけて各省庁・業界団体が取りまとめ、年末(12月)の税制改正大綱に反映されるかが問われる。控除対象外消費税問題は長年にわたり議論が積み重ねられてきた課題であり、一朝一夕の解決は難しいとされてきたが、四病協は「診療報酬だけでは足りない」と継続的に要望を発信している。

令和9年度税制改正大綱の動向は2026年12月頃に明らかになる見通しであり、あわせて令和9年度(2027年度)診療報酬改定の議論も本格化する時期と重なる。税制・診療報酬の両面を俯瞰した中期的な経営計画の見直しが求められる局面だ。

自院で確認したいこと

  • 直近決算で自院の医業利益・経常利益の黒字・赤字状況を確認し、経営課題の優先順位を整理しておく
  • 建物・設備の整備にかかる消費税負担(控除対象外消費税相当額)を試算しておくと、今後の政策議論に対応した経営判断の基礎資料になる
  • 控除対象外消費税の補填のあり方は施設機能・種別によって異なるため、自院が補填過不足のどちらに位置するかを把握しておくことが望ましい
  • 令和9年度税制改正の動向(2026年12月頃)と令和9年度診療報酬改定の議論(中医協、2026年秋以降)を並行してウォッチする
  • 税制・補填に関する詳細は税理士・顧問公認会計士等の専門家、または地方厚生局にご確認ください