3行結論
- 厚生労働省は令和8年8月5日、都道府県知事宛に「地域医療構想の作成について」(医政発0805第3号)を通知し、新たな地域医療構想の全国一斉策定が本格始動した
- 新たな地域医療構想では、医療機関は「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4類型から自施設の機能を選択し、毎年の実績報告を行う
- 都道府県は2026〜2028年度の集中期間で策定を進め、2028年度中に急性期拠点を含む医療機関名と機能の確定が求められる
「病床改革」から「地域医療全体の再設計」へ
令和8年7月3日、厚生労働省は「地域医療構想策定ガイドライン」(医政発0703第4号)を公表しました。そして8月5日には都道府県知事宛に「地域医療構想の作成について」(医政発0805第3号)・「地域医療構想の策定・推進に向けた体制の整備について」(医政発0805第4号)の2本の通知が発出され、全国の都道府県が正式に策定作業を開始する段階に入りました。
今回の新たな地域医療構想は、2025年度まで運用されてきた従来の地域医療構想(平成28年度〜)と大きく性格が異なります。従来の構想が病床機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)の4区分での病床数の調整を中心としていたのに対し、新たな構想は「外来医療・在宅医療・介護連携を含む地域医療提供体制全体の再設計」を目指すものです。
2040年に向けて75歳以上の超高齢者が急増する一方、生産年齢人口は急減します。この構造変化に対応できる医療体制を各地域が主体的に設計する仕組みとして、改正医療法(令和7年法律第87号)に基づき制度化されました。
4つの医療機関機能 — 自院はどの類型を選ぶか
ガイドラインでは、医療機関が選択すべき機能として以下の4類型が示されています。
① 急性期拠点機能 高度な手術・救急搬送を集約し、生命の危機に対応する高度急性期医療を担う施設です。配置の目安は人口20万〜30万人に1か所とされており、診療実績データを基本に、政策医療の実施状況・経営状況・建物の老朽化なども含めた「総合的な地域協議」で選定されます。
② 高齢者救急・地域急性期機能 誤嚥性肺炎・骨折など高齢者に多い救急疾患を受け入れ、早期リハビリと一般的な手術に対応する地域の中核病院です。急性期拠点と連携しながら、地域の急性期需要を幅広く受け止める役割を担います。
③ 在宅医療等連携機能 24時間体制の往診・訪問看護により、自宅での療養を支援する機能です。外来・在宅・介護との連携を担い、地域包括ケアの核となります。
④ 専門等機能 リハビリテーションや特定診療科に特化した高度なケアを提供する機能です。精神科・結核・感染症など政策医療を担う病院もこの類型が想定されます。
なお、従来の病床区分にあった「回復期機能」は新構想では**「包括期機能」に改称**されています。機能名称と内容が変わることに留意が必要です。
また、4つの機能類型は「並列ではない」と整理されており、各医療機関が地域の需要を踏まえて複数の機能を組み合わせて担うケースも想定されています。専門家は「自院がどの機能を担えるかを診療実績データで客観的に確認することが先決」と指摘しています。
策定スケジュール — 2028年度が医療機関名確定の期限
新たな地域医療構想の策定は、国が2026〜2028年度を「集中的な検討期間」と位置付けています。
- 2026年度(令和8年度):人口推計・医療需要の現状把握、構想区域の点検・見直し開始
- 2027年度(令和9年度):医療機関機能に着目した連携・再編・集約化の協議開始
- 2028年度(令和10年度):急性期拠点を含む医療機関名と担当機能を含む地域医療構想の確定
つまり、2028年度末までに「どの病院が急性期拠点を担うか」が名指しで決定される構造です。
医療機関は毎年、現在の担当機能と2040年に目指す機能、診療実績を「医療機関機能報告」として報告し、その報告内容が都道府県の構想調整会議での協議の基礎資料になります。公立・民間を問わず、診療実績に基づく客観的評価が前提となります。
2026年度は「現状把握の年」です。都道府県がデータ分析を進め、構想区域の設定(人口20万人以上を基本)や医療需要の推計を行います。医療機関にとっては「自院のデータを整理し、どの機能を担いたいかを早めに院内で議論しておく」タイミングといえます。
その後2029年度には第9次医療計画(6か年計画)が策定される予定であり、2035年度には新たな地域医療構想の成果確認が行われます。
自院で確認したいこと
- 現在届け出ている病床機能報告の内容と、新たな4類型(急性期拠点・高齢者救急・在宅医療等連携・専門等)のどれに対応するかを令和8年度内に整理しておく
- 「急性期拠点機能」の候補になりうるかどうか、手術件数・救急搬送受入数・高度医療の実績データを客観的に確認する
- 都道府県が令和8〜9年度に開催する構想調整会議のスケジュールを把握し、自院の意見を発信できる準備をする
- 「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」を志向する場合、外来・在宅・介護との連携体制の現状と課題を整理する
- 病床区分の名称変更(「回復期」→「包括期」)が自院の病棟管理・届出に影響しないかを確認する
- 所管都道府県の医療政策担当部署から届く説明会・照会への対応窓口を院内に確保する
- 個別の届出要件・算定可否の最終確認は地方厚生局へ。新たな地域医療構想の個別対応については所管都道府県の医療計画担当部署への確認が必要