病床利用率は、病院経営のもっとも基本的なKPIです。しかし「利用率と稼働率の違い」「自院の損益分岐点が何%か」を即答できる経営陣は意外に少数です。この記事で定義から経営への使い方までを整理します。
計算式(厚生労働省の定義)
病床利用率(%)= 在院患者延数 ÷(病床数 × 日数)× 100
「在院患者延数」は各日24時時点の在院患者数の合計です。月報・年報(病院報告)はこの定義で集計されます。
「病床稼働率」との違い
実務でよく使う病床稼働率は、退院日の患者もカウントに含めます。
病床稼働率(%)=(在院患者延数 + 退院患者数)÷(病床数 × 日数)× 100
同じ病棟でも稼働率は利用率より数ポイント高く出ます。回転が速い急性期ほど乖離が大きくなります。院内で「どちらの定義で話しているか」を統一していないと、会議の数字が噛み合いません。
全国平均の水準感
病院報告によると、一般病床の利用率は全国平均で7割台の水準で推移しており、長期的には低下傾向にあります。療養病床は8割台後半、精神病床は8割前後が目安です。自院の数値は「同じ病床機能・同規模」の平均と比べてください。全体平均との比較には意味がありません。
損益分岐点の考え方
病院はコストの大半が固定費のため、損益分岐点となる利用率が存在します。一般に80%前後と言われますが、これはあくまで目安で、入院単価と固定費の水準で各院ごとに決まります。簡易的には次で試算できます。
損益分岐点利用率 = 固定費 ÷(1日あたり入院単価 × 病床数 × 365日 × 限界利益率)
貴院の数値での試算は病床利用率×損益分岐点シミュレーター(無料・登録不要)ですぐに行えます。
「1ポイント」のインパクトを知る
200床・入院単価5万円の病院なら、利用率1ポイント(2床分)の改善は
2床 × 5万円 × 365日 = 年間約3,650万円の増収
に相当します。利用率の低い病院にとって、これほどレバレッジの大きい経営指標は他にありません。
利用率を上げる打ち手(優先順)
- 紹介元の開拓 — 近隣急性期・ケアマネ・施設への定期訪問を「営業活動」として仕組み化する
- 入退院支援の強化 — 入院決定から入床までのリードタイム短縮、退院日の平準化
- 病床機能の転換 — その機能の需要が地域にないなら、器を需要に合わせる(地域包括ケア病棟等)
まとめ
病床利用率は「定義を統一し、損益分岐点と比べ、1ポイントの価値を金額で知る」ことで初めて経営の道具になります。自院の損益分岐点利用率の試算を含む無料経営診断を提供していますので、現在地の確認にご活用ください。