「病院 売却」で検索して出てくる情報の多くは、実はクリニック(無床診療所)向けです。病床を持つ病院の売却は、関わる利害関係者も行政手続きも桁違いに複雑です。この記事では病院に特化した売却の流れを解説します。

クリニック売却との違い

  • 病床許可の承継が最大の論点になる(地域医療構想・基準病床数との関係)
  • 職員数が数十〜数百名規模で、労務デューデリジェンスが重い
  • 借入金・医療機器リースが大きく、金融機関との調整が必須
  • 地域の医師会・自治体・連携病院への影響が大きく、情報管理がシビア

売却の7ステップ

1. 意思決定と目的の整理(〜1ヶ月)

「なぜ売るのか」「何を守りたいのか」を言語化します。創業者利益の最大化か、雇用維持か、診療機能の継続か。優先順位が曖昧なまま進めると、交渉の全局面でブレます。

2. 磨き上げ(3ヶ月〜2年)

決算の透明化、理事長貸付金の整理、未払い残業代の解消、許認可書類の整備。ここに時間をかけるほど価格と成約率が上がります。

3. 相手探し(3〜6ヶ月)

仲介会社・金融機関・医師会ルートなど。ノンネームシート(匿名概要書)で打診し、関心を示した相手と秘密保持契約を結びます。情報漏洩は職員の離職と患者減を招く最大のリスクです。打診先は絞り込むべきです。

4. トップ面談・基本合意(1〜2ヶ月)

価格レンジ、スキーム(持分譲渡か事業譲渡か)、独占交渉期間を定めます。

5. デューデリジェンス(1〜3ヶ月)

買い手側の専門家が財務・法務・労務・診療報酬を精査します。算定ルールの誤りによる返還リスクは病院特有の重い論点です。

6. 最終契約(1ヶ月)

表明保証、価格調整、理事長の連帯保証解除、職員の雇用条件維持、院長の引き継ぎ期間などを契約書に落とします。

7. クロージングと引き継ぎ(3ヶ月〜1年)

社員総会での社員交代、役員変更登記、行政届出、そして患者・職員・地域への説明。成約はゴールではなく、引き継ぎの質が病院のその後を決めます。

仲介会社に任せきりにしてはいけない3点

  1. 査定額の根拠 — 高い査定で専任契約を取り、後から下げる手法が業界に存在します
  2. 買い手の将来計画 — 手数料は成約で発生するため、仲介会社は買い手の質を深くは問いません
  3. 売却以外の選択肢 — 経営受託や自力再建は仲介会社の収益にならないため、提案されません

まとめ

病院売却は、準備を含めると1〜3年がかりのプロジェクトです。そして売却は選択肢の一つにすぎません。当NPOでは、売却・再生・経営受託を同じテーブルで比較する無料経営診断を提供しています。仲介契約を結ぶ前に、一度中立の視点を入れてください。